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中台関係の当面の安定

 台湾の陳総統が、南米への外遊に伴う立ち寄り先として希望していた米国内の都市に関して、ほぼ純然たる給油目的となるアンカレジが選定されたことに不満を表明しているようだ。(参照)New York Timesなどでもやや背景を含めて報じられているが、(参照2)この中台関係の現状に関しては基本的な状況を確認しておいてもいいかもしれない。

 現時点での客観的な分析としては、このロス氏の論文が冷静にまとめていると思う。台湾の独立路線は頓挫したというものだ。全文を読むには購入する必要があるが、和訳は「論座」の」5月号に掲載されている。

 端的な事実は下記の通りであろう。

But it has not resulted in widespread calls for a formal declaration of independence. Voters, reflecting Beijing's military and economic hold on the island, have preferred to accommodate China's opposition to Taiwan's independence.

 結局台湾の有権者の意向がまず第一の要素となるのであるが、この点に関して、日本の親台マスコミの見解とは異なり、精彩の無い党首を擁した時でさえ、国民党は多数の支持を得ていたということが指摘されている。また陳総統が選出された際の選挙でさえ、支持は39%にとどまっていた事、拙速な独立そのものは90%が反対していたということだ。そして最近の世論調査では民進党は支持を急落させているという。

 思い返せば、確かに台湾の有権者は中国との直接対決は一貫してリスクが大き過ぎると判断してきたのだ。今現在、宙ぶらりんな状態であることは間違いが無いが、市民生活そのものに影響が出てはいない。台湾のような国においてはそういう選択となるのは無理もない。これでも独立路線への支持はまだ高いほうと言えるのかもしれない。

 ただ、ここでロス氏が意図的に触れなかったか、あるいは自然に重視しなかった事に関しては補足してもいいかもしれない。台湾くらいの規模の国(と仮に表記するが)においては、自国だけで決定的なパワーにはならないため、集団安全保障に関して外国の支持を取り付けるのも能力の一つとして判定されるという事だ。陳総統自身がブッシュ政権と折り合いが悪いという事情がかなりの悪影響となって跳ね返っている。日本風に言うと空気が読めないという所か。米国の対テロ戦やイラク政策に関して、何らかの形で支援したと言う印象は薄く、かつ自国の防衛にすら積極的ではない。これは国民党の妨害の結果でもあるのだが、少し自国のみの利益を追求し過ぎた感はあるだろう。

 その間の中国はというと、今現在の中台関係を「現状」と規定し、ここから変化することを「現状の変革」であるとして米国にアプローチをした。これは正しい外交と言えるだろう。過激な策より長期的に取り組んだほうが成功するというコンセンサスが、少なくとも共産党の上層部においてはなされたのかもしれない。

 しかしながら、とかく中台関係には不確定要素が多すぎる。次期米大統領の政策が民主主義に関してより原則重視になればまた違うし、中国が台湾から発せられるメッセージを誤解すれば混乱が発生する。台湾の独立路線の支持は、民主主義国では日本も含めて高いが、政治的に支持が集まるかというとそうでもない。ここしばらくは関係を管理する作業に労力を取られることになるだろう。

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Comments

そういえば,最近,馬が(○鹿と言いたくなってしまう...)アメリカに行ってきたけど,それで好評価でもうけたのでしょうかね?

Posted by: toorisugari | 2006.05.07 at 04:06 PM

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