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解散・総選挙に思う日本の政党政治の状況

 結局参院では郵政民営化法案が否決され、小泉首相は衆議院を解散した。選挙日程は奇しくも9.11だが、米国のそれほどではないにせよ日本の将来もいささか変わる日になりそうだ。思うことは色々ある。今回のエントリはいつにもましてまとまりが無いが許されたい。

 以前のエントリでも書いたように、私は自民党がかなり善戦するという予想をしている。理由は簡単で、あれだけ落ち度の多い今までの自民党でも政権の座にはあったからだ。今回小泉首相の下で守旧派と世間的には見られている人々を追放して戦う選挙戦ではそれなりの追い風があり、そして主に岡田代表などを代表とする民主党執行部の無力により、改革勢力としての政治姿勢にやや疑問符が付いている。少なくとも(マスコミの報道はどうか知らないが)客観条件的には小泉自民党に有利と思われる。何だかんだといいながらも、都市部の知識人サラリーマンなどがマジョリティの帰趨を決めてきたと思うが、その付近が大幅に戻ってくるかもしれない。例えば今回だと東京一区、自民党の与謝野氏と民主党の海江田氏だが、しばらく海江田氏が勝利していたが今回は与謝野氏が勝利するのではないだろうか。まぁここは普通のサラリーマンが多いわけではないが。

 大雑把な色分けをすれば、小泉自民党は小さな政府志向で親米非中韓、亀井派を中心とした政治勢力と民主党は大きい政府志向およびやや反米の親中と見えなくも無い。問題はこれが最終的な政治勢力の色分けとして定着するかどうかだ。というのは、もしこれが定着すると、今後の政治展望としては後者の長期低迷・万年野党化しかないと考えているからだ。それでは55年体制の奇妙な反復でしかない。そしてこれは現在の米民主党の停滞に不思議に重なる。ただ米国では民主党右派の懸念はかなり深刻なことから巻き返しもあるだろう。日本ではあるのだろうか。

 日本の民主党の問題は外交や安全保障で強い。これを指摘する人は多く、今まで私が目にした複数の世論調査でも一貫している。今回国内的にもどうかという話になるとは思うが当面それはおいて、この問題に関して考える。なぜなら、この外交姿勢が日本の政党政治の縛りになっている側面が強いと考えるからだ。そもそも日本の政治勢力で、外交・安全保障面で戦略上奇矯でない現実的な範囲で対立点が発生するとしたらどのようなものになるだろうか。恐らく、米国との同盟維持は一致するだろう。その上で軽武装路線で米国と密接に行動するか、やや重武装路線で独立性を保ち、対米協力を高めに売りつけるかの二種類くらいしかないのではないだろうか。分かりやすくいうとイギリスみたいにやるかフランスみたいにやるかの違いという事だろう。そしてその現実が対立点を生み出し難い現状になっているのではないかと考える。

 安全保障上米国から独立性を保った外交を意図したいのなら、その分米国をアテに出来なくなる面が強くなる以上、自国の負担が増えるのは当然だろう。日本の左派勢力は対米自立を唱えつつ防衛費の削減を要求している。本質的な論理矛盾であり、議論として成立しない。論理的に成立するとすれば、日本人に提供する安全保障の要求水準を引き下げて議論する、言い換えれば脅威を矮小化して現在が過剰と表現し、実際に発生するマイナス面を正当化するしかない。社民党がこれで、つじつま自体は合う。注意して欲しいのは、この種の主張は世界的に見れば大国の周辺にある小国ではしばしば実際にあることだ。まして国内的に国民の人権を軽視する場合はなおさらだ。しかしこれは極端に日本人の多数派に受けが悪い。日本人が自覚している以上に日本は外から見れば誇り高い国家だということだ。この種の風景は色々他にもある。
 また重武装・独立性重視に傾くのは、軽武装・協調路線より相対的に保守勢力が採用するのが当然だろう。軽武装路線を小泉自民党が担っているとしたら、ここの政治勢力が当面国内に存在しない。確かにこの路線は核武装なども含めて検討の要があるので日本で支持を集めるのが難しいのだろう。
 総合的に考えれば、大まかな路線として親米軽武装を唱えることで一致し、そこからブレずにほんの僅かな違いで論争するという話はあり得る。ただ何がしか独自のカラーを出したいという色気が政治家にはどうしても発生する。それは例えばチャイナスクールの罠に絡め取られるとか、多くは不幸な結果を出してしまう。
 このように日本の外交・安全保障政策の停滞は構造的な問題もあり、実際のところは政治家ばかりを責められない。むしろ多数派は悪い条件の中で良くやっていると言えるかもしれない。そして政治は透明性が大事なのは言うまでも無いが、日本の不幸は、有権者がなまじ先が見えることだろう。短期はともかく、長期で見れば路線選択は概して正確だ。マジョリティは常に決まっている風景が継続している。しかし予定調和では議会政治の活動が停滞する。では、切磋琢磨し、もう一段の進歩をする余地はどこにあるのだろうか?

 あるとすれば、それは人権という面ではないだろうか。日本の外交では、他国の人権に無関心か冷淡であることが多い。だから拉致問題などでも外国の視線は、中韓はともかくむしろ民主主義国の視線が時に痛い。自分に回ってきたときだけ大騒ぎかと。それでも建前上無条件で支持するというのが民主主義国の気概ではある。不幸な事件であったが、対外関与のあり方を強化するきっかけになればまだしも進歩の一助かと思う。だから民主党は主張するとすれば自民党以上に北朝鮮や韓国、中国国内の人権問題に鋭く批判的でなければならない。視野はより広く、世界的でなければならず、国際的な枠組みの提案者で無ければならない。自民党を親米とすれば民主党は親米+親EUというところだろうか。ただ、今の日本人は例え短期的でもこれ以上の負荷を背負うのが本当に嫌なようだ。本当に限られた選択肢しかないのが現状なのだろうか。

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Comments

純粋にお教えを頂ければと思い、書き込ませて頂きます。

> 注意して欲しいのは、この種の主張は世界的に見れば大国の周辺にある小
> 国ではしばしば実際にあることだ。

の具体例をお教え下さい。こうした観点からニュースを分析したことがなかったので、具体例がさっぱり思いつきません。まとまった書籍があれば、ぜひ熟読してみたく思います。

その昔、かんべえ氏が紹介なさっておられたニュージーランドの安全保障論を聞き、社民党といい勝負の空想的平和主義に驚愕、配偶者と「いい国なんだねえ」「人間、こんな風でありたいねえ」と慨嘆したことがあります、くらいが私が知る非日本での社民党的な議論でして。

Posted by: forsterstrasse | 2005.08.08 at 11:57 PM

脅威があるのに脅威ではないと言い募り、そしてずるずると無原則な妥協を繰り返す。こう表現すると割とピンと来るでしょうか?まず隣の国がそうですよね。あと民族的に重なっている場合はもっと複雑な様相を呈します。特に地域政党への伝播が問題をややこしくします。旧ユーゴ諸国で対セルビア外交など惨憺たるものです。アフリカに至ってはもう・・・・対ナイジェリアなんか私が表現した以前の段階でしょうね。
まとまった書籍というより、各国史を読むだけでも良いかもしれません。私も人に言うほど詳しいわけではないですけどね。

日本は、良くも悪くも近代的国民国家の一つとして他者と相対しているのでしょう。「アメリカの属国」などと表現する人間に心から嫌悪を覚えます。本当の属国というものがどういう状況だったかについての配慮がありません。あるときは心ならずも、ある時は屈折してそうなることの歴史がいかに苦いものだったか、そういう人には想像すらできないのでしょう。

Posted by: カワセミ | 2005.08.09 at 12:53 AM

>私は自民党がかなり善戦するという予想をしている。

カワセミさんがそう予想されているので、同じ予想(私の場合には願望ですが)をしている者として心強い限りです。自民に勝ってもらわないと困ります(汗)

私的には民主が割れて現実思考のまともなグループが民主を飛び出してくれれば面白いと思うのですが、郵政法案での団結ぶりを見るとやはり無理なのでしょうか・・・

Posted by: まったり | 2005.08.09 at 12:55 AM

今回ばかりはほぼ全面的に同感です。

Posted by: 丸尾 | 2005.08.09 at 04:16 AM

>分かりやすくいうとイギリスみたいにやるかフランスみたいにやるかの違いという事だろう。

 現実の安全保障の選択枝としてのフランスモデル(端的に言えばドゴール主義)については私が若かりしころかなり話題になったが今は論壇をにぎわすこともないようです.ただ、いっときの佐藤政権や首相就任以前の中曽根プランには、この変形版が見られるのも事実で、これが今の吉田モデル(軽武装+日米同盟)一色の保守陣営の安全保障観に移行していった背景には、いうまでもなく田中以降の日中友好ムードと米中間の緊張緩和がありました.だが、もうこの前提が続くと考えるのは難しいでしょう.日本版ゴーリズム(特にその核戦略論)が再び蘇るかどうか.可能性は薄いとみますが、北朝鮮情勢(そして論理的にはイランも)如何では息を吹き返すかもしれません.親米派(私もそう)はこれをどう論駁するかの頭の体操をやっておいたほうがよいと愚考します.

Posted by: M.N.生 | 2005.08.09 at 02:56 PM

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