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対北朝鮮政策における一提言

 北朝鮮情勢は膠着状態である。事態が動くかもしれないという時期に、やや予想外とも思えるイラン大統領選挙の結果となり、こちらが大問題となるかもしれない。米国で以前からしばしば指摘されていたように欧州のアプローチは失敗コースだろう。普通に考えると米国は仮想的に抑止が成立している現在の北朝鮮情勢を、少なくとも短期的には動かしたくないと思っているだろう。しかし膠着状態であるという事は、逆に各国の思惑もほぼ固定化して流動性が少ないということでもあり、外交の基本的方針は立てやすい時期であると言えるのかもしれない。ここで、北朝鮮政策に関して現時点で日本が取るべき基本的な姿勢を提言してみたい。

 まず各国の思惑、基本的スタンスを整理したい。私は以下のように認識している。

米国:
 短期的には核拡散防止が成立すれば良しとしている。中長期的には北朝鮮が明確に核武装国として成立する可能性があるが、これは容認できない。

中国:
 北朝鮮の体制がいま少し親中国的な政権であることを望むが、次善の策として現状も容認したい。ごく小規模な量であれば止む無くではあるが核武装も容認。

ロシア:
 極東において継続的なプレゼンスを維持することが重要。極東地域の不安定化は望まない。

韓国:
 微妙な立場。親北朝鮮の世論が強く北に融和的。これに保守派は反発しているが、しかしそのような政治勢力も現状で北との統一は真っ平だという本音があるため、結果的に北朝鮮の体制維持という点では国策として合意が成立している。

北朝鮮:
 当然、現在の体制維持が最優先である。

 ここで、日本の立場が最も微妙である。拉致問題なども含め、北朝鮮の現体制の崩壊を望む向きも多いが、その結果にはリスクが存在することから慎重である。またそれは米国の軍事力頼みであるため自らリアクションも起こせない。自国から軍事オプションを言い出せば相応の武力行使が義務となるからである。

 次に、経済制裁問題に関して言及したい。私は短期的には単独制裁に反対である。経済制裁は米国にも経験があるが、米国とても単独では他国の抜け道をフォローできず、実効が上がるまでには時間がかかっている。そして単純な事実として、この制裁をキャンセルするようなリアクションが他国から出てこないかを検討しておく必要性がある。例えば、韓国が「北の人民がかわいそうだ」というのを大義名分として、北の体制維持を目的に山のような援助をする可能性はないだろうか。私は充分にあると思う。そして、経済制裁だけで体制が崩壊した例は世界的に見て極めて少ない。せいぜいが政治カードとしての効用だが、これは拉致問題自体が恐らくは金正日自身が深く関わっている以上、効力は無いだろう。経済の論理で安全保障問題を動かすことは難しいという、国際政治上の基本的な構図はここでも変わらないと思われる。ただし、経済制裁が有効である局面は無いでもない。それは、北朝鮮が唯一反応する、軍事的な強制力とセットになった場合である。つまり、軍事的な制裁の前段階として巧妙に使われた場合、その段階で問題が決着する可能性がある。

 いずれにせよ、国際的な枠組が重要であり、特に韓国を間違いなく日米同盟側でコントロールすることが大切である。(もちろん、南北セットで経済制裁をかけるというような事態にまで至るのなら話は別だが、現在の韓国とてさして覚悟があるわけではないのでそこに至るまでに渋々ながら妥協するとは思う)ここで、実質的に破綻している6ヶ国協議に変わり正統性をどこに求めるかが当面のテーマになる。具体的には、国連安保理か民主主義国の合意の2種類であろう。前者は古典的なアプローチで、後者はユーゴ型である。そしてこの中間のやや後者寄りのアプローチとしてG8などの枠組みがあり、この付近が適切と考える。なぜなら、北朝鮮問題は次の2つが主な課題であるからだ。

(1) 核開発問題
(2) 人権問題

 (1)は言うまでも無い。(2)はいわゆる拉致問題も含むが、日本がやるべきはこれを北朝鮮の広範な人権問題の一環としてアピールすることであり、また自国の国民のみならず、北朝鮮国内の国民の人権も含めて問題視するべきだろう。人権問題一般の解決として国際的なアプローチを図り、その中で拉致問題も解決するのが一見遠回りながら最も確実な方法であると考える。そしてこの両者を課題として解決するには民主主義国の合意というユーゴ型のアプローチのほうが安保理より適切である。安保理では人権問題に冷淡な国の発言力も強く、そもそも機能するかどうか疑わしいからだ。そして人権問題を包括的に扱うことにより、日本以上にいる韓国の拉致被害者が無視されている点に関してもクローズアップされるだろう。国際的な注目が集まり、民主主義国からの圧力が高まるにつれ、韓国国内での拉致被害者への無視という政治状況が若干なりと修正されてくるのではないか。

 手順としては、G8で極東ロシアの安定に何がしか一定程度協力するという前提でロシアを説得し、米国などとの協調路線に誘導して軍事的アプローチが現実味があると北朝鮮政府に思わせるという感じか。米露関係の修復を模索するタイミングと呼吸を合わせる必要があるだろう。(なお、日本との領土問題などとの連立方程式もあり、実際のアプローチは極めて複雑だ)その段階では中国も黙認コースになると思われるし、韓国も共同歩調となるだろう。それで経済制裁なら、戦争に至らずに解決する可能性があるかもしれない。金正日は計算は出来る独裁者のようだ。であるとすれば、それなりの金を渡して第三国への亡命を薦めれば容認する可能性もあるかもしれない。金を出す側としては正義という面で割り切れない思いはあるにしても、戦争を回避するという総合的な人道性という面で考慮の余地はあるだろう。今後別の国に同様のアプローチをするためにも、国際基金でも作って第一号の実例になってもらってはどうだろうか。アフリカの小国の独裁者にはこの手のアプローチも案外有効であるから。
 当面、次のG8サミットあたりが振り出しだろうか。中国は政治大国化する有効なチャンスを逸したかもしれない。日本が湾岸戦争で、欧州がユーゴ紛争でそうであったように。

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