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ロシア民主化後退への懸念

 最近、ロシア政治が専制的な体制に戻りつつあると言われる。その中でこのニュースを知ったのがつい先ほどのこと。たまたまチェックから漏れていたのだが、これはまずいなと直感的に感じた。(参照)ロシア下院を完全比例代表で選ぶというものである。少しばかりショックで、まだあまりニュースを追ってないがともかく所感を。
 議会政治は民主主義の命である。そして比例代表制度は単独で運用するとろくな事が無い。ナチスが有名だが、現在でも多くの途上国で独裁追従になったりする。要は、議員が有権者ではなく、名簿を決定する党の執行部の方を向くことになるからだ。この弊害のため、欧州各国でも運用に工夫を凝らしている。例えばスウェーデンでは名簿が公開され、自分の望む候補者に○を付け、一定以上の票数だと当選する、という具合だ。
 日本国内で考えてみよう。比例代表を主張する政党は党の執行部が権威的ではないだろうか?そして政治的に骨太な、芯のある政治家は小選挙区で強い基盤を持っていないだろうか?ただ多様な主張が国会の場に出てくるという意味で、少数政党が少しはあっても良いという事もあり、その意味で日本では比例代表を少な目の議席配分で加味するのは適切だ。米国など比例代表が無い国は地方政府が強力で多様な存在なのがそれを補っているという事かもしれない。日本の選挙制度は批判も多いが、大局的に見れば現在の制度は適切で、細かな部分で激しく論争されていると考えるべきだろう。なお中選挙区が駄目だったのは間違いない。実際に選挙制度改革後、日本の国会議員の質は大幅に向上している。マスコミ報道等では自覚はされにくいが、後年転換点とは認識されるだろう。もちろん不況の厳しさによる政治状況の変化もあるが。

 そしてロシアの場合、その多様性を確保する地方の知事が任命制になった。これも致命的だが、百歩譲って安定性確保のためと言えなくも無い。しかしこの議会制度の変更は折り返し不可能点に到達する可能性もありそうだ。不幸なことに今原油高で、ある側面では経済は好調だ。しかし一次産品に頼る国が国際市場価格の変動でどうなるかは言うまでも無い。一度政治状況が不安定になり、そこで議会が硬直的ではどうにもならない。
 個人的には、プーチンが当面社会の安定を目指し、次の大統領でどうなるか次第かと思っていた。しかしどうも事態はそこまでのんびりしていないようだ。米国では、マケイン上院議員あたりを中心にG8からの追放が主張されている。中国よりこっちのほうが世界的に見て不確定要素が強いかもしれない。

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Comments

 不勉強で恐縮ですが、中選挙区が駄目だった理由を教えてもらえますか?純粋に知りたいです。

Posted by: Tatsu | 2005.05.15 05:41 AM

細かいことを言い出せばいろいろとありますが、大局的に見ると、一部の国民の支持しか集まらないような非現実的・非常識な政策を持つ政治家が当選するからだ、と言えます。
同一選挙区で数名当選する場合、投票した有権者の1/5程度の支持しかない場合でも当選することがあります。その程度だと駄目な有権者もそれなりにはいますし、また質の悪い利益誘導などの効果も大きいです。なお社会党がそこそこの勢力を持ち、現在のようなまだ論争足りうる二大政党にはならなかった理由にもなっています。例え小さい選挙区としても、そこの有権者のトップの支持を得るというのはそれなりのハードルで、極端な政策・無責任な政策では当選できないのです。
現在でもその残滓が残る参議院の二人区は問題があります。自民党と民主党が一人ずつ候補者を出せばほぼ無条件で通り、こんなもの選挙とは言えないでしょう。

Posted by: カワセミ | 2005.05.15 11:56 AM

うーん、「議員が有権者ではなく、名簿を決定する党の執行部の方を向くこと」が駄目ということは、イギリスのように党議拘束が厳しく党の執行部が候補者の選挙区への割り振りに力を持つ制度というのは駄目な選挙制度なのでしょうか。もう少し詳しく教えていただければと思います。

Posted by: mitsu | 2005.05.16 01:17 AM

イギリスの場合、これは欧州の典型例でもあるのですが、日本と違って議員が政党を選ぶというより政党が議員を育て上げてくるという感じです。こいつは将来我が党で大きな役割を果たす、と思うと大事にする傾向があります。日本だと足を引っ張る感が強いような・・・・・
また元々階級社会で社会的な立場により投票する政党がかなり固定化しており、流動化してきたのは我々が思うより割と最近みたいですね。いずれにせよ日本のように議員が所属政党を変えるというのは本質的に有り得ない世界ではあります。そして有権者の選択とはまた別の話かと思います。

Posted by: カワセミ | 2005.05.16 01:38 AM

完全比例選挙(政党選択型)がダメな理由は、議員が有権者より党幹部をみることもあろうと思いますが、私は根本的に民主主義と政党の関係にあるのではないかと思います.つまり、民主主義の基本が個々の人にあるのか政党にあるのかという点ですね.完全比例制は表面的には民意が完全に反映されると思われがちですが、実は民意を代表するという主張する一握りの人間にあやつられた集団を生み出してきたのが歴史の現実ですね.ナチスしかり共産主義国しかり.代議制と政党制の持つ緊張関係に、もっと注目してもよいと感じます.

Posted by: M.N.生 | 2005.05.16 11:03 AM

いつも拝見しております。
できればコメントも付けたいのですがそれほどの識見もありませんので結局はROMってます(汗)
カワセミさんの投稿を参考に一稿あげましたので
一言ごあいさつに参上しました。

Posted by: まったり | 2005.05.16 08:39 PM

実は発見してました(笑)大変恐縮です。たまたまでもあるので過大評価無きよう。

私はロシアの民主化コースは2年位前の情勢では確固としたものかと思っていたんですけどね。それとも民主化初期の混乱の範囲か・・・・そう願いたいものです。

Posted by: カワセミ | 2005.05.16 08:48 PM

まったくの蛇足に過ぎないかもしれませんが、ちょっとだけ補足です。

中選挙区制の廃止が政治改革の目玉として取り上げられた背景の一つは、自民党の派閥政治の克服でしたよね。派閥政治に伴う幹事長の権限と政治資金の増大も大きな問題として指摘されました。これらは外国での日本研究においては大きな政治的特徴として分析されています。

小選挙区制と比例代表制の比較でよく言われる点の一つは、結果として二大政党制になるか多党制になるかということかと思います。どちらが望ましい政治体制なのかは、その国の状況や伝統によるので一概に言えないということかと思います。例えば、多党制のメリットは少数者の利益を代表させやすいことと言いますが、一律に比例代表制をとってきたイスラエルでは、小党乱立状態を招きました。これは中東和平に向けて大きな決断が必要な国家にとっては、決して良いことではなかったと聞きます。一方で、現在のイラクのように、何よりも国家の分裂を避けることが至上命題とされる状況においては、大きな決断はできなくとも、しぶとく議論と妥協を続けて、少数者を排除しないシステムの方が適切なのだと思います。日本の場合について言えば、55年体制という特有の事情がありましたから、何よりも政権交代を実現させるために、二大政党に近い形になることが望まれた事情があったと思います。

もう一つ、M.N.生さんも言及されていますが、政党に対する敵視という伝統的な憲法学の思想は軽視できないと思います。もちろん現代においては政党の意義は変容しているのですが、この出発点の思考をおさえておくことは重要です。

(話がだいぶずれてしまいました(笑)。カワセミさんのご意見に直接関わるものではない感じですが、まったくの補論として記しておきます。)

Posted by: やじゅん | 2005.05.16 11:59 PM

ロシアは発展途上国
あれだけ多大な資源を誇ることからは、考えられないほど貧弱な経済だ。
国家の発展段階で考えれば、この時期に専制的であったからといってあまり問題視すべきではないと思う。
資源以外で外貨を獲得できるような、国際企業を官主導で構築するというのはある種の定跡だろう。

Posted by: Setsuna | 2005.05.18 08:59 PM

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