« 国連安保理改革の行方 | Main | おやアクセス数が »

韓国政治の漂流

 韓国の政治が不安定さを増している。近年特に米国で問題視されているのはこの発言だ。このように「どっちの味方になるか分からない」と宣言するのは昨今の対米外交としては致命的な失敗であると思う。下手をするとこれが致命傷になる可能性がある。
 これは韓国の立場を考えると、このような考え方に傾斜するのは無理もない。周辺に大国が多くて、純粋に自国の影響力だけなら低いという場合、「キャスティングボードを握る」という戦略は世界的に見てもしばしば存在する。ただ言うまでもないが危険であり、過去のポーランドやタイ、その他の経緯を見ても相当の外交手腕を必要とするのは言うまでもない。。

 以前Finalventさんのエントリでなかなかうまい書き方をされていたが、韓国政治の漂流は、基本的に盧武鉉大統領が選出されたからというよりウリ党が第一党になったことにある。非常識な主張をする政党が議会で第一党になるとロクなことが起きないという政治の現実は世界の近代史に赤裸々に刻み込まれている。韓国の状況を安保騒動の頃の日本に例えている人がいるが、本質的な部分で全く違う。当時の日本は知識人がマルクス主義一色であったにも関わらず、サイレントマジョリティの選択は継続的に確実なものであり続けていたのだ。これも私が日本の民主主義が稚拙な伝統に支えられているものでないと主張する根拠の一つであるが。さすがに日本よりは骨があると言えるフランスだって結構ふらふらしていたのだ。

 米国の安全保障に対する外交行動は、9.11以降、いくつか大きな変化を示している。その一つが不確実性の脅威に対応するために確実な部分を増大させることに注力することであり、それに高い価値を置いているという事がある。これをブッシュ政権のみの特性のように報じているメディアがあるが、そうした側面も無いわけではないが本質的に誤りといえる。そうであるから、イラク戦争においてブレア首相はもちろん小泉首相、ハワード首相のように首脳が終始明確さを旨として対応した国が米国とうまくいっているのである。兵力の問題は当初から米国が大半負担すると覚悟が決まっているだけに(まして担当地域の危険度まで勘案すれば米国が100%近いかもしれない)当初からあまり気にしてもいなかったのである。日本より多くの兵力を送ったのになぜと国内で議論されている韓国の状況は問題であるが、ただここらの認識を間違っている国は他にも多い。

追記(2005.04.03)
ちょうど雪斎どのがバランサー論にコメントされていました。私の意見もほぼ同様ですが、コメント欄で少し書いているように、むしろ歴代政権と同様に現状維持を望むゆえの屈折という側面が強いと思います。

|

« 国連安保理改革の行方 | Main | おやアクセス数が »

Comments

 はじめまして。Hacheと申します。外交・安全保障の入門・体験コースをさまよっている者です。不正確で恐縮ですが、「北東アジアでのバランサー」を目指すという発言は、米韓関係とあわせて考えると、韓国は現状維持勢力から現状打破勢力に移ったと読めてしまいます。忘恩と思い上がりは亡国への道であることを韓国の指導者は理解できていない。愚鈍にも限度があるものですが。

Posted by: Hache | 2005.04.03 at 01:21 AM

 はじめましてHacheさん、こちらこそ宜しくお願いします。

 韓国自身の考え方としては恐らく逆なのでしょう。分断状況により繁栄してきたのですから、場合によっては統一国家になってしまう現在の日米のやり方に危惧を覚え北政権の延命を望む、と。つまり現状維持派。そのためのバランサー論でしょう。その点、実は韓国の歴代政権と違いはないので、変わったのは米国側という見方も出来ます。その為の北への肩入れですから分からなくはないです。同じ民族であるというのも当然影響しています。昔の西ドイツも融和的で、中距離弾道ミサイルの配備で大モメしていたのを記憶している人もいるかと思います。今日の我々はそういう抑止の維持が大切であったことを認識していますが、当時は東西ドイツだけが灰になると大騒ぎでした。
 その意味で深刻なのは韓国に北の核武装を追認する傾向があるということです。「北の核は日本や米国向けで、同民族の我々に向けることはない」という論が大手を振っているのはどうにも分かりません。自国民すら平気で犠牲にする北朝鮮の現実を指摘するだけで、反論としては充分のように思うのですが。
 もっとも韓国のみならず、日本にもこういう「民族バカ」はいますね。国民国家というものをどう考えているのでしょうか?オランダ民族もフランス民族もありませんよね。

Posted by: カワセミ | 2005.04.03 at 01:35 PM

 TBをありがとうございます。
 御説の通り、韓国政府の意図が朝鮮半島の「現状維持」にあるとしても、実際の韓国政府の対応は、どのように見ても「現状打破」的なのです。「現状」を維持するために「現状」を打破するというのは、かなりアクロバティックな振る舞いですが、韓国政府は、そのアクロバティックなことを平然とやろうとしている。怖いものです。

Posted by: 雪斎 | 2005.04.03 at 02:59 PM

 まさしく、雪斎どののおっしゃる通りと思います。
 あくまで韓国側の意識を述べただけで、真の現状維持とは何かとなると明らかに間違えたアプローチでしょう。北が核廃棄し、より開明的な政権に変化する以外に現状維持はありません。つまりは米国の主張通りで、韓国もそれにフォーカスせねばならないのですがそうなっていません。「運命の瞬間」は近付いているように思います。その時にはまた日米に擦り寄るのは確実でしょうが、そこで米国の態度がどうか、ですね。

Posted by: カワセミ | 2005.04.03 at 03:41 PM

私には、金大中の「太陽政策」には、金大中なりの、「小国」としての韓国のつらさ、それなりの覚悟、一応のリアリズムがあったと理解しています。ドイツのように北朝鮮を吸収合併できるだけの経済力が韓国にはなく、当時300万人もの餓死者を出した北朝鮮が崩壊してもらっては困る、現状維持してくれ、という悲痛な願いが「太陽政策」です。しかし、盧武鉉となりとなりこの現状維持の「太陽政策」が、誇大妄想的な「東北アジア中心国家論」に変質しました。彼なのか、彼のブレーンなのかわかりませんが、国際政治におけるそのリアリズムからまったく乖離した発言の数々は、このままだと、韓国そのものも東アジアのリスクとなるのではないか、と感じています。

Posted by: soulnote | 2005.04.05 at 04:37 PM

ああ、勉強不足なのか私はそういう視点では見ておりませんでした。そうかもしれませんね。
本人自身がシビアな人生を送ってきたから、生存するためのバランス感覚は持っていたんでしょうね。また当時は米国も一度は騙された後ではあります。ブッシュ政権の時に整理しなおせばと思ったのですが、当時の国内情勢だと厳しいでしょうね。

Posted by: カワセミ | 2005.04.05 at 10:15 PM

The comments to this entry are closed.

« 国連安保理改革の行方 | Main | おやアクセス数が »