ブログ移転のお知らせ
最近ココログの調子が良くないので、本ブログを移転することにしました。移転先はこちらになります。今後の更新等は全て移転先で行います。こちらも当分残してはおきますが、更新作業は行わないので宜しくお願いします。古い記事も含め、コメント・トラックバック等も移転先にてお願い致します。
移転先はバックアップしたココログの記事をそのままインポートする事が出来ました。引越し先としては割とお薦めかも。
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国内対立で紛争が絶えないスリランカであるが、停戦監視の努力にもかかわらず多くの死傷者を出す事件が発生した。(参照1)今後の戦闘激化が懸念されている。この種の内戦の終結が困難なのは世界で共通ではあるが、和平を促す外国勢力の持続的な関与がある事、島国で国境監視も比較的容易である事など、条件的に有利な面もある。また厳しい経済水準から政治の現状を考えると国民の資質も比較的高いように思われる。にもかかわらず状況は厳しいようだ。
例によって外務省のサイトを引用する。(参照2)日本からすると重要度の薄い小国という印象があるがここでの記述は多い。要人往来も活発である事が分かるだろう。日本との関係を記したページ(参照3)に率直に理由を記述しているのが面白い。シーレーンにあり地政学的に重要なこと、親日的であることと記されている。外務省はこういうときに建前を記述するに留めることが多かった印象があるが最近はそうでもないのだろうか。
同じページに昨今の情勢も比較的詳述されている。かなり多くの国が関与しているのが分かるだろう。にも関わらずこの国の反政府勢力との交渉は至難であろう。よりによってというか、恐らく世界で最初に女性の自爆テロを組織的にやり始めたと思われる、「タミル・イーラム解放の虎」(LTTE)が交渉相手となっている。他のタミル人組織に対しても、インドとの関係が深すぎるなどの理由で攻撃的であり(ちなみにインドはラジブ・ガンジー首相まで暗殺されているくらいなので、近年は腰が引けている)米国など主要な民主主義国からはテロ組織として認定されている。やっている事それ自体は、自爆テロ以外に少年を拉致して兵士に仕立てるとか民間人への攻撃も辞さないなど残虐を極めるのでそう評価されるのも当然だろう。にも関わらずタミル人の間で一定の浸透がある。無論地域の実験を握っている以上、恐怖からの服従という面はある。しかし少数派が抱える恐怖というのはなかなか厄介だ。
LTTEのリーダー、Prabhakaranへのインタビュ-が公開されている。(参照4)当然LTTEの言い分に偏っているわけだが、内容は反政府勢力の言い分としてある種の典型を示す。自分たちは迫害され、やむを得ず抵抗している、言論は役に立たない、議会は多数派の専制であるという論調。ただ、スリランカのタミル人くらいの社会集団となれば、民族浄化のごとき未来は可能性がそれなりにあるという恐怖が動機となっている。そのため、自らが弱者であると認識されている集団で、相対的にカリスマがあり強いリーダーと目されている人物により穏健な人物が取って代わることは本質的に至難なのであろう。
ノルウェーが中心となり、停戦監視のミッションが北欧諸国によって展開されている。しかしWikiの項目でも示されているように(参照5)多数派シンハラ人からの評判はあまり良くない。LTTEの肩を持ち過ぎるという。これもまた世界でよく見られる光景だ。停戦監視を継続しようとすれば、それをしばしば破ろうとする勢力に多くの妥協をする事は当然である。テロに対する一方的な被害者であると考えている人々に不評なのは当たり前だろう。それでも長期で見れば、手法はどうでもいいし条件が重なっただけの偶然でも良いから、平和が継続することによって互いの不信を緩和させ、次の段階に進むしかないのだろう。ただこのLTTEに関しては、そのような手法が有効かどうかは議論の余地がある。地域を管理する現実の勢力として対処するべきか、それとも短期には混乱があっても別の現実を作り出したほうが長期には良いとするべきか、判断は難しい。ただ後者を選択したのがイラク戦争だが、現実で分かるように良い結果を得るためには長期のリソース投入が必須とはなる。
日中の東シナ海ガス田問題は、日本では資源の問題というより主権の問題として、中国ではそれに加え共産党の政治的問題として認識されているようだ。そのため構造的に合意に達しにくい状況であり解決が難しい。またこのような広大な大陸棚が広がっている係争地域もあまりなく、政治的条件も異なり他国の事例も参考になりにくい。そのためこのキューバ沖の話は参考に出来る事例でもないのだが、米国内ではそれなりに話題となっていることから取り上げておきたい。
1977年、米国とキューバが双方の権利を保持するようフロリダ海峡を分割した条約を結んでいる。これはそれなりに海峡が深いこともあり、さすがに米国は大陸棚云々とキューバの領海近くまでの権利主張はしていない。また近年の米国は自国沿岸地域での石油・天然ガス開発はしていない。米国は環境保護団体の発言力が強いこともあり、事故による水質汚濁への懸念しているということが背景にある。過去有名な事故としてはアラスカでのエクソン社のものがあり、それ以来大規模な原油流出事故への恐怖が根強くある。この件は英語版Wikiの記述が手厚く、参考になると思われる。(参照)将来のエネルギー安全保障に備えて採掘していないのではないかという意見もあるが、共和党より民主党のほうが石油開発には消極的なところを見てもそれは過大評価であろう。技術進展による価値下落のほうがペースが早いのではないか。
ともあれ、最近のキューバは中国やインドといった外国からの働きかけもあり、自国沖の資源を開発する政策を進めており、海底資源問題が改めて注目を集めている。(参照2)言うまでも無いが米国内でのキューバへの反発は強く、非民主的な国の関与は様々な政治的レベルで懸念が表明されている。(参照3)あくまで利潤を追求する民間企業が主体となるカナダやスペインとは違って、中国などは国策としてかなり無神経な態度を取っているようで、米国から厳しい反応が返って来ているようだ。先の記事にある"acting as if they can somehow 'lock up' energy supplies around the world"という事が重要で、市場に流さず囲い込むという挙動に反発がある。この点は日本も対イランなどで意識しておいたほうが良いことでもある。
中国に関しては、米国と外交案件が山積みなこの時期に間も悪いし、摩擦は事前に予想できそうなものだが。それを考えると、東シナ海で日本と交渉している内容は、自国沿岸でもありまだ遠慮深いほうだとでも中国は思っているのかもしれない。またインドについても、米国内ではブッシュ政権は甘い対応をし過ぎるとこれまた風当たりが強くなっている。
とはいえ、自国周辺での石油資源の利用をより積極的に進めるべきだという意見は常にあるし、そういう動きに繋げるためにこのキューバの件を報道しているという人々もいる。このコラムなどはその主張の典型例といえるだろうか。(なおここで記述されているメキシコの件は、メキシコが一部麻薬の合法化を検討していて米国が猛反発しているという事が背景にある)何しろメキシコ湾に関してはあまり調査もされていないようなのだ。さっさと調査して採掘すればいいと思うのだが。なぜか石油は戦略資源として特別視されることが多い。確かに代替性は最も低い部類に入るが、一次産品は抱えていても価値があるわけではなく、市場に提供して初めて利益となる。北米自由協定を締結していて、一人当たりの所得水準が米国より低めでビジネスが回りやすいメキシコに開発させるのが一番良いと思うのだが。メキシコが経済的に反映すれば、難民や犯罪者、麻薬などの米国への流入も減るのではないか。
台湾の陳総統が、南米への外遊に伴う立ち寄り先として希望していた米国内の都市に関して、ほぼ純然たる給油目的となるアンカレジが選定されたことに不満を表明しているようだ。(参照)New York Timesなどでもやや背景を含めて報じられているが、(参照2)この中台関係の現状に関しては基本的な状況を確認しておいてもいいかもしれない。
現時点での客観的な分析としては、このロス氏の論文が冷静にまとめていると思う。台湾の独立路線は頓挫したというものだ。全文を読むには購入する必要があるが、和訳は「論座」の」5月号に掲載されている。
端的な事実は下記の通りであろう。
But it has not resulted in widespread calls for a formal declaration of independence. Voters, reflecting Beijing's military and economic hold on the island, have preferred to accommodate China's opposition to Taiwan's independence.
結局台湾の有権者の意向がまず第一の要素となるのであるが、この点に関して、日本の親台マスコミの見解とは異なり、精彩の無い党首を擁した時でさえ、国民党は多数の支持を得ていたということが指摘されている。また陳総統が選出された際の選挙でさえ、支持は39%にとどまっていた事、拙速な独立そのものは90%が反対していたということだ。そして最近の世論調査では民進党は支持を急落させているという。
思い返せば、確かに台湾の有権者は中国との直接対決は一貫してリスクが大き過ぎると判断してきたのだ。今現在、宙ぶらりんな状態であることは間違いが無いが、市民生活そのものに影響が出てはいない。台湾のような国においてはそういう選択となるのは無理もない。これでも独立路線への支持はまだ高いほうと言えるのかもしれない。
ただ、ここでロス氏が意図的に触れなかったか、あるいは自然に重視しなかった事に関しては補足してもいいかもしれない。台湾くらいの規模の国(と仮に表記するが)においては、自国だけで決定的なパワーにはならないため、集団安全保障に関して外国の支持を取り付けるのも能力の一つとして判定されるという事だ。陳総統自身がブッシュ政権と折り合いが悪いという事情がかなりの悪影響となって跳ね返っている。日本風に言うと空気が読めないという所か。米国の対テロ戦やイラク政策に関して、何らかの形で支援したと言う印象は薄く、かつ自国の防衛にすら積極的ではない。これは国民党の妨害の結果でもあるのだが、少し自国のみの利益を追求し過ぎた感はあるだろう。
その間の中国はというと、今現在の中台関係を「現状」と規定し、ここから変化することを「現状の変革」であるとして米国にアプローチをした。これは正しい外交と言えるだろう。過激な策より長期的に取り組んだほうが成功するというコンセンサスが、少なくとも共産党の上層部においてはなされたのかもしれない。
しかしながら、とかく中台関係には不確定要素が多すぎる。次期米大統領の政策が民主主義に関してより原則重視になればまた違うし、中国が台湾から発せられるメッセージを誤解すれば混乱が発生する。台湾の独立路線の支持は、民主主義国では日本も含めて高いが、政治的に支持が集まるかというとそうでもない。ここしばらくは関係を管理する作業に労力を取られることになるだろう。
小泉首相の訪米が6月に予定されている。その際、米議会での演説を検討してみてはどうかという米識者からの提言があると聞く。民主主義国として中国との違いもアピールできるし、吉田首相以来45年ぶりということで注目も集めるだろう、とのことだ。
米国での議会演説は格式があり、誰でも容認されるというわけではない以上、こういう機会は積極的に生かすべきであろう。米国人の琴線に触れるスピーチが出来れば良いのだが。
日本の政治家として、この種のスピーチで評判になった者は少ない。古い話になるが、過去第一次大戦時に石井菊次郎が行ったものがある。石井菊次郎は、第一次大戦への参戦に関してほぼイニシアティブを取った加藤高明と並んで、20世紀前半の日本外交を支えた人物である。陸奥や小村の時代に気迫を示した日本外交は、この時代に一層の成熟を示し一定の到達を示した感がある。しかし今日この両者はそれほど著名という印象は無い。歴史に日露戦争後の記述が少ない戦後教育の偏向によるものかもしれない。であれば、今後再評価されるのは間違いないと思うが。
石井菊次郎の訪米は1917年である。内容はこのページに概略が示されている。石井はホワイトハウス訪問と議会演説の間にワシントンの墓に詣で、花を捧げている。そしてスピーチを行った。以下の部分は米国的な言い回しだ。ケネディの「ベルリン市民」に遠く通じるような精神のあり方ではないか?
Washington was an American, but America, great as she is, powerful as she is, certain as she is of her splendid destiny, can lay no exclusive claim to this immortal name. Washington is now a citizen of the world; today he belongs to all mankind. And so men come here from the ends of the earth to honor his memory and to reiterate their faith in the principles to which his great life was devoted.
そして上院の演説だ。内容は上記の同じページの"Viscount Ishii arose and said:"以下の部分が該当する。戦時と言うことで建前となっている部分も確かに多いのであるが、非常に見事なものである。これに関しては別宮氏がサイトで解説ページを設けており、和訳もあるので参照すると良いだろう。当時のドイツが恒常的に無思慮な拡張主義者とみなされていた雰囲気が良く出ている。そして、この演説の後半部分を引用してみたい。和訳部分は直接氏のサイトを参照されたい。
Mr. President and gentlemen, whatever the critic half informed or the. hired slanderer may say against us, in forming your judgment of Japan we ask you only to use those splendid abilities that guide this great nation. The criminal plotter against our good neighborhood takes advantage of the fact that at this time of the world's crisis many things must of necessity remain untold and unrecorded in the daily newspapers; but we are satisfied that we are doing our best. In this tremendous work, as we move together, shoulder to shoulder, to a certain victory, America and Japan must have many things in which the one can help the other. We have much in common and much to do in concert. That is the reason I have been sent and that is the reason you have received me here today.
繰り返すが、これは1917年のスピーチで、今からおよそ90年前のものだ。にもかかわらず、現在この内容がほぼそのまま通用することに驚く。悪意を持った誹謗に対応しなければならないし、自らの立場を説明しなければいけない。この前の部分のa scrap of paperの言い回しも共通の価値に該当する。法の支配の伝統、自由の価値といった共通の価値観を重視し、肩を揃えて一緒に働く。およそ国と国との友好に必要な条件はいつの時代も変わらないのかもしれない。
そしてBecauseを語らないと国際社会では不安の目で見られるだけだ。米国は、戦争自体の参加は、特に大戦争になればなるほどいつも立ち上がりが遅いことは示唆的だ。また日本の拉致問題は今回の横田夫妻の訪米でようやく一定の理解を得た。EUの対中武器輸出問題は、ここ数ヶ月でやっと「日米の了解が必要である」とのコメントを引き出すことが出来た。日本人の時計は欧米より早いのが常だと思っておかなくてはいけない。またそういう説明も、ともに働くことでしか相手に届かないのかもしれない。
日本は、NATOの域外活動との連携を強めると聞く。今度の訪米は当然それも念頭にあるだろう。小泉首相は、米国で何を語るのだろうか。脅威認識は共通であるとしても、何に関して、どのように一緒に働くと言うのだろうか。まさか3兆円出すと言うだけではないと思うが。
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